犬の嘔吐に血が混じる — 今すぐ病院に行くべき?原因と対処法
この記事は獣医師の監修を受けています
犬の嘔吐物に血が混じっているのを見つけたとき、飼い主は強い不安を感じるはずです。血が混じった嘔吐(吐血・血性嘔吐)は、軽度の胃粘膜刺激から生命を脅かす緊急疾患まで、幅広い原因が考えられます。血の量が少量でも、繰り返す場合や他の症状を伴う場合は必ず受診してください。
犬の嘔吐に血が混じる原因
胃潰瘍・胃粘膜びらん
胃の粘膜が傷つき出血する状態です。ストレス、絶食、異物などによって起こるほか、NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の投与中に発生することもあります。人用の痛み止め(イブプロフェン、アスピリンなど)を誤って摂取した場合も同様のリスクがあります。
異物誤飲
鶏の骨、串、布の切れ端などの鋭利な異物が消化管粘膜を傷つけ、出血を引き起こします。ひも状の異物は特に危険で、腸閉塞を起こす可能性があります。
出血性胃腸炎(HGE / AHDS)
急性出血性下痢症候群とも呼ばれます。突然の多量の血性嘔吐・血便が特徴で、小型犬・若齢犬に多い傾向があります。原因は未解明の部分が多いですが、Clostridium perfringens などの細菌が関与すると考えられています。急速に脱水が進むため、緊急治療が必要です。
中毒
殺鼠剤(ワルファリン系)、ブドウ・玉ねぎ・チョコレートなどの摂取により、消化管出血が起こることがあります。誤食が疑われる場合は何を食べたか可能な範囲で記録してください。
腫瘍
胃や消化管の腫瘍(胃腺癌、リンパ腫など)が出血源となる場合があります。高齢犬でじわじわ続く血性嘔吐は特に注意が必要です。
その他
重度の歯周病、凝固異常(免疫介在性血小板減少症など)、鼻腔・肺からの血液の嚥下も吐血のように見えることがあります。
血の色で見分ける危険度
血の色は出血部位と経過時間のヒントになります。ただし色だけで判断せず、他の症状と合わせて評価してください。
鮮血(赤い血)
食道・胃の上部からの新鮮な出血を示します。消化管の比較的浅い部位での出血、または大量出血が起きている可能性があります。嘔吐物全体が赤く染まっている場合は緊急性が高いです。
コーヒー残渣様・茶色・黒っぽい血
胃酸によって血液が酸化・変色したもので、胃潰瘍や十二指腸からの出血を示します。少量でも繰り返す場合や、黒色タール便を伴う場合は受診が必要です。
ピンク色・うっすら赤い
軽度の胃粘膜刺激(激しい嘔吐による粘膜の微細な裂傷など)によることが多いですが、続くようであれば受診してください。
今すぐ病院に行くべきサイン
以下のいずれかに当てはまる場合は、夜間救急を含めて今すぐ受診してください。
- ぐったりしている、立てない、意識が朦朧としている
- 嘔吐物に大量の鮮血が混じっている
- 血便(赤い下痢・黒いタール状の便)も同時に出ている
- 腹部が膨らんでいる、お腹を触ると痛がる
- 体温が低い(手足が冷たい、震えている)
- 呼吸が速い・荒い
- 殺鼠剤・NSAIDs・有毒なものを誤食した可能性がある
- 血の量が少量でも、同日中に2回以上繰り返している
様子見してよい場合
以下の条件をすべて満たす場合は、当日中に通常の診療時間内で受診することを検討できます(翌日まで様子見は推奨しません)。
- 1回だけの嘔吐で、ごく少量の血(ピンク色程度)が混じっている
- 嘔吐後も元気があり、水を飲める
- 食欲はやや落ちているが、ぐったりはしていない
- 血便・腹部の張り・体温低下などの随伴症状がない
ただし、症状が落ち着いて見えても「1回だけだった」と安心しないでください。翌朝同様の嘔吐が再発した場合は迷わず受診を。
自宅でできる応急処置
- 嘔吐物を写真に撮る — 血の量・色・性状は診察の重要な情報です。スマートフォンで撮影しておくことで、病院でより正確な状況を伝えられます。
- 絶食・少量の水 — 2〜3時間は食事を与えず、胃を休ませます。水は少量ずつ様子を見ながら与えてください。嘔吐が続く場合は水も控えます。
- 安静を保つ — 興奮させないよう静かな場所に寝かせます。
- 誤食の可能性を確認 — 何かを食べた形跡がないか自宅を確認し、異物・有害物質が疑われる場合はすぐに病院へ連絡してください。
- 薬を与えない — 人用の胃薬・痛み止めは犬に使用禁止です。自己判断での投薬は症状を悪化させる可能性があります。
病院に行くときの準備
- 嘔吐物の写真(血の色・量・混じり物が分かるもの)
- 最後に食べたもの・量・時刻
- 直近の排便の状態(血便の有無、色、硬さ)
- 服用中の薬・サプリメント(特にNSAIDs系)
- 誤食の可能性があるもの(製品名・推定摂取量)
- 症状が始まった時刻と経過(何回吐いたか、いつから元気がないか)
これらを事前にメモしておくと、獣医師が原因を特定しやすくなり、迅速な処置につながります。
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。