犬が草を食べて吐く — 心配いらないケースと危険なケース
この記事は獣医師の監修を受けています
散歩中に突然草を食べて吐いた——そんな経験をした飼い主さんは多いはずです。犬が草を食べる行動は珍しくなく、必ずしも病気のサインではありません。しかし、吐き方・頻度・食べた草の種類によっては危険なケースもあります。「いつもの草食い」と「受診が必要な草食い」を正しく見分けましょう。
犬が草を食べて吐く主な原因
本能的な胃の不快感を解消しようとしている
犬が草を食べる理由のひとつとして、「胃に不快感を覚えたときに草を食べて嘔吐を誘発し、気持ち悪さを解消しようとする」という説があります。消化されない草の繊維が胃壁を刺激し、嘔吐反射を引き起こすと考えられています。
実際、草を食べた犬の多くは食べた後に嘔吐しますが、嘔吐後はケロッとして元気になることがほとんどです。この場合は深刻な問題ではなく、犬が自分で不快感に対処しようとしていると解釈できます。
単なる食の好みや好奇心
一方で、「胃が悪いわけではなく、単純に草の味や食感が好き」という説も有力です。研究によれば、草を食べた犬の多くは嘔吐せず、食べる直前に病気の症状も示していないとされています。繊維質摂取や微量栄養素を本能的に補おうとしている可能性もあります。
消化器疾患・慢性的な胃腸の不調
草を食べて吐く行動が週に何度も繰り返される場合は注意が必要です。慢性胃炎、胃酸過多、炎症性腸疾患(IBD)、膵炎など消化器系の疾患が背景にある可能性があります。「うちの子はよく草を食べる」と慣れてしまわず、頻度の変化には敏感でいることが大切です。
除草剤・農薬・肥料の摂取
草を食べることで最も注意すべき危険がこれです。公園・道路沿い・ゴルフ場近くなどで管理されている芝生や雑草には、除草剤(グリホサートなど)や殺虫剤・化学肥料が散布されていることがあります。これらを口にした場合、嘔吐だけでなく、神経症状(震え・ふらつき)や口腔内の炎症、重篤な中毒を引き起こす可能性があります。
今すぐ病院に行くべきサイン
以下の症状がひとつでも当てはまる場合はすぐに動物病院へ。
- 嘔吐が繰り返し止まらない(30分〜1時間で3回以上)
- 嘔吐物に血液が混じっている(鮮血・コーヒー色)
- ぐったりして動きたがらない、震えている
- 口・歯茎・舌に赤みや腫れ、泡が見られる
- 神経症状がある(ふらつき、よだれが大量、けいれん)
- 除草剤・農薬が散布されていた可能性がある草を食べた
- 有毒植物(ツツジ、スズラン、アサガオなど)を食べた可能性がある
- 草を食べて吐く行動が最近急に増えた、または週3回以上繰り返されている
- 子犬・高齢犬・持病のある犬で嘔吐が続いている
農薬中毒は発症が速い: 除草剤・殺虫剤を口にした場合、症状が出るまで数時間かかることがありますが、一度出始めると急速に悪化することがあります。「まだ元気そう」でも、心当たりがあれば迷わず受診してください。
様子見してよい場合
以下の条件をすべて満たす場合は、しばらく自宅で観察することができます。
- 成犬(1歳以上)で基礎疾患がない
- 草を食べた後に1〜2回嘔吐して、その後は落ち着いている
- 嘔吐物に血液・異物が混じっていない
- 元気があり、普通に立ち歩ける
- 食欲は少し落ちているが水を飲める
- 散布された農薬・除草剤の可能性がない場所で食べた
- 有毒植物を食べた可能性がない
様子見をする場合も、症状が悪化した場合・嘔吐が6時間以上続く場合・翌日になっても食欲が戻らない場合は受診してください。
自宅でできる応急処置
2〜4時間の絶食で胃腸を落ち着かせる
草を食べて吐いた後は、胃が刺激されて過敏になっています。嘔吐が落ち着いてから2〜4時間は食事を与えず、胃腸を休ませましょう(子犬・超小型犬・高齢犬は絶食よりも少量給餌を継続し、早めの受診を)。
水は少量ずつ与える
嘔吐直後は水も控えめに。15〜20分おきに大さじ1〜2杯程度を様子を見ながら与えます。飲んでも吐かなければ少しずつ量を増やします。
散歩コースの草の状況を確認する
「どこで草を食べたか」を思い出してください。公園の管理業者が農薬散布した直後、または「農薬使用」の看板がある場所だった場合は、情報として獣医師に伝えます。
有毒植物リストで確認する
犬に有毒な植物には、ツツジ・アジサイ・スズラン・キョウチクトウ・イチイ(オンコ)などがあります。食べた植物に心当たりがある場合は、写真を撮って獣医師に見せましょう。
市販の吐き気止めや胃薬は与えない
人間用の薬は犬に使用しないでください。犬の代謝に合わない成分が含まれており、症状を悪化させる可能性があります。
病院に行くときの準備
スムーズな診察のために以下を準備しましょう。
持参するもの・情報
- 嘔吐の回数・時刻のメモ
- 嘔吐物の写真(血液の有無・色・内容物)
- 草を食べた場所(公園名・道路など)と農薬の可能性の有無
- 食べた可能性のある植物の写真
- 直近24時間で食べた食事・おやつのリスト
- ワクチン接種歴
病院で伝えること
- 草を食べた時刻と量(おおよそ)
- 最初に症状が出た時刻
- 農薬・除草剤散布の可能性
- 以前から草をよく食べる習慣があるか、最近頻度が増したか
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。