猫の便秘 — 原因と家庭でできる改善策・受診の目安
この記事は獣医師の監修を受けています
猫は犬と比べて便秘になりやすい動物です。特に中高齢(7歳以上)の猫、肥満の猫、運動量の少ない完全室内飼育の猫で便秘の発症率が高くなります。正常な猫の排便は1日1〜2回が目安ですが、2日に1回程度でもその猫にとっての「通常ペース」であれば問題ないこともあります。ただし排便ペースが明らかに遅くなった、いきむ姿が増えた場合は早めの対処が大切です。
猫の便秘の主な原因
1. 水分摂取不足
猫はもともと積極的に水を飲まない動物です。ドライフード中心の食事だと1日の水分摂取量が不足しがちで、便が硬くなります。体重4kgの猫の1日の水分必要量はおよそ200〜250mlですが、ドライフードだけでは50ml程度しか食事から水分を得られません。
2. 毛球(もうきゅう)
グルーミングで飲み込んだ被毛が消化管内で塊になり、便の通過を妨げることがあります。長毛種(ペルシャ・メインクーン・ノルウェージャンフォレストキャットなど)で特に起こりやすい原因です。
3. トイレ環境の問題
猫は清潔なトイレを好みます。以下の状況で排便を我慢する子がいます。
- トイレの掃除頻度が少ない(1日1回未満)
- トイレの数が不足(理想は「猫の頭数+1」個)
- 猫砂の種類が合わない・最近変えた
- トイレの場所が落ち着かない(人通りが多い・洗濯機のそばなど)
4. 運動不足・肥満
運動量が減ると腸のぜん動運動(腸が内容物を送り出す動き)が低下します。肥満の猫はさらに腹腔内の脂肪が腸を圧迫し、便秘を悪化させます。体重が理想体重の15%以上超過している場合は肥満とされます。
5. 病気
- 巨大結腸症(きょだいけっちょうしょう):結腸(大腸の一部)が異常に拡張し、便を押し出す力を失った状態。慢性便秘の最終形態
- 慢性腎臓病(CKD):脱水により便が硬くなる。10歳以上の猫の約30%がCKDを持つ
- 甲状腺機能亢進症:高齢猫に多く、消化管運動の変化を引き起こす
- 骨盤骨折の既往:過去の骨折で骨盤が狭くなり、物理的に便の通過が困難になる
6. 薬の副作用
オピオイド系鎮痛薬・抗ヒスタミン薬・利尿剤・スクラルファート(胃粘膜保護薬)などが便秘の原因になることがあります。
今すぐ病院に行くべきサイン
- 3日以上排便がない
- 何度もトイレに入っていきむが便が出ない+鳴く
- 嘔吐を伴っている
- お腹が膨れている・触ると嫌がる
- 食欲が完全になくなった
- ぐったりしている
- 排便時に血液が出る
- 排便姿勢なのに少量の水様便しか出ない(硬い便の周りを液状の便が通過している状態=「溢流性下痢」の可能性)
様子見してよい場合
以下をすべて満たす場合は、1〜2日間の自宅ケアを試せます。
- 排便がない期間が48時間以内
- 食欲・元気・水飲みは普段通り
- 嘔吐がない
- トイレでいきむ回数が1日1〜2回程度で、鳴いたり痛がったりしない
- 持病(腎臓病など)の急性悪化を疑わせる症状がない
家庭でできる改善策
水分摂取を増やす
最も効果的な対策は水分摂取量を増やすことです。
- ウェットフードの比率を上げる:理想はウェットフード100%、難しければドライとウェットを半々に
- フードにぬるま湯を加える:大さじ1〜2杯をフードにかける
- 流れる水の給水器を導入:猫は流れる水を好む傾向がある
- 水飲み場を家の中に3か所以上設置:フードボウルとは離れた場所に置く
トイレ環境を整える
- 1日2回以上の清掃
- トイレの数を「猫の頭数+1」に増やす
- 静かで猫が安心できる場所に設置する
- 猫砂の種類を最近変えた場合は、元の砂に戻すことを検討
食物繊維を補う
- かぼちゃ(加熱済み・皮と種を除去):小さじ1〜2をフードに混ぜる(1日1〜2回)
- 市販の猫用毛球ケアフード:食物繊維が強化されている
- 猫用サイリウムサプリメント:用量は製品の指示に従う
運動を促す
- 1日15〜20分のおもちゃ遊び(猫じゃらし・レーザーポインターなど)
- キャットタワーの設置で上下運動を促す
お腹のマッサージ
猫を膝に乗せてリラックスした状態で、お腹を時計回りにゆっくりやさしくマッサージします(1回2〜3分)。嫌がる猫には無理をしないでください。
やってはいけないこと
- 人間用の下剤・浣腸を絶対に使わない:リン酸ナトリウム含有浣腸は猫に致死的な高リン血症を引き起こす危険があります
- 牛乳を大量に飲ませる:乳糖不耐症の猫では下痢を起こすだけで便秘の根本解決にならない
- オリーブオイルを直接飲ませる:誤嚥や脂質過多による膵炎のリスク
病院に行くときの準備
- 排便記録:最後に排便した日時・便の硬さや量・いきみの頻度
- 食事内容:フードの種類(ドライ/ウェット)・量・おやつ
- トイレの状況:砂の種類・トイレの数・最近の変更点
- 持病と薬:腎臓病などの治療歴・服用中の薬
- 便のサンプル:少量でも出ている場合は持参する
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。