犬の夏バテ — 食欲不振・水分補給のポイントと病気との見分け方

犬の夏バテ — 食欲不振・水分補給のポイントと病気との見分け方

この記事は獣医師の監修を受けています

気温と湿度が上がる夏、「なんだか元気がない」「ごはんを残すようになった」と感じたら、夏バテのサインかもしれません。ただし、夏バテに似た症状を示す危険な病気もあります。正しい知識で愛犬の変化を見逃さないようにしましょう。


犬の夏バテの主な症状

犬の夏バテは、暑さと湿度によって自律神経や消化機能が乱れることで起こります。代表的な症状は以下のとおりです。

  • 食欲不振・食べる量が減る:暑さで消化器が疲れ、食欲が落ちる
  • 元気がない・活動量の低下:散歩に行きたがらない、横になっている時間が増える
  • 軟便・下痢:腸の働きが低下して便が緩くなる
  • 水を飲まない・飲みすぎる:体調により水分摂取量が乱れる
  • パンティング(口呼吸)の増加:体温を下げようとして呼吸が荒くなる

これらの症状が暑い時期に重なって現れ、涼しい環境に移すと数時間〜1日程度で改善するようなら、夏バテの可能性が高いです。


夏バテと病気の見分け方

夏バテとよく似た症状が出る病気には、次のものがあります。

熱中症

熱中症は夏バテと異なり、急速に悪化して命に関わります。体温が39.5℃以上に上昇し、大量のよだれ、口の中が真っ赤になる、フラつき・倒れるなどの症状が特徴です。夏バテが「じわじわ体力が落ちる」のに対し、熱中症は「短時間で急変する」のが大きな違いです。

膵炎(すいえん)

膵炎は食欲不振・嘔吐・腹痛を伴います。特徴的なのは「祈りのポーズ」と呼ばれる、前足を伸ばしてお尻だけ持ち上げる姿勢です。脂肪分の多い食事がきっかけになることが多く、繰り返し嘔吐する場合は膵炎を疑いましょう。

腸閉塞

誤飲・誤食後に起こりやすく、何度も嘔吐するのに排便がない・お腹が張っているのが目安です。嘔吐物に便臭がしたり、緑色の液体を吐いたりしたら緊急受診が必要です。

見分けのポイント

状態食欲嘔吐腹痛急変
夏バテ低下まれなしなし
熱中症低下ありなしあり
膵炎低下繰り返す強いあり
腸閉塞なし繰り返すありあり

今すぐ病院に行くべきサイン

次のいずれかに当てはまる場合は、様子を見ずに動物病院へ連れて行ってください。

  • 2〜3日以上まったく食べない(または水も飲まない)
  • 体温が39.5℃以上ある、またはぐったりして反応が鈍い
  • 1時間に2回以上嘔吐する、または嘔吐が止まらない
  • お腹が張っている、または腹痛で「祈りのポーズ」をとっている
  • ふらついて立てない、けいれんしている
  • 口・歯茎の色が白っぽい、または青紫になっている
  • 散歩中や車内など、高温環境にいた後に急変した

「2〜3日食べなかったら病院」が目安ですが、体重が小さい犬(5kg以下)や子犬・老犬・持病がある犬は1日食べない時点で相談することをおすすめします。


様子見してよい場合

次の条件がすべて当てはまる場合は、24〜48時間程度、自宅で様子を見ることができます。

  • 水は自分から飲んでいる
  • 嘔吐や下痢がない(または軽い軟便のみ)
  • 呼びかけると反応する、自力で動ける
  • 涼しい場所に移すと少し落ち着いている
  • 体温が正常範囲(38〜39℃)

ただし症状が改善しない、または悪化する場合は早めに受診してください。


食欲を回復させる工夫

夏バテで食欲が落ちているときは、無理に大量を食べさせようとせず、次の工夫で少しずつ回復を促しましょう。

フードの温度・形状を変える

  • ドライフードを少量のぬるま湯でふやかすと香りが立ち、食べやすくなる
  • ウェットフードをトッパー(乗せるだけ)として少量混ぜる
  • フードを冷蔵庫で冷やして提供する(夏は常温より冷たい方が食欲が出る犬もいる)

少量を複数回に分ける
1日2回を3〜4回に分けて「少量頻回給餌」にすると、消化器への負担が減り食べやすくなります。

食欲を刺激するトッパー食材
ゆでた鶏むね肉、スクランブルエッグ(味付けなし)、無塩のじゃがいもなどを少量トッピングすると食欲が戻ることがあります。香りで食欲を刺激するのがポイントです。


水分補給のポイント

犬の1日あたりの必要水分量の目安は体重1kgあたり50〜60mlです。4kgの犬なら200〜240ml程度が目安になります。

水飲み場を増やす
部屋の複数箇所に水を置き、犬が自分で飲みに行きやすい環境をつくりましょう。水は1日2回以上取り替えて清潔に保つことが大切です。

ウェットフードや水分の多い食材を活用する
フードに水分を混ぜるほか、スイカ(種を取り除く)やきゅうりは水分含有量が高く、おやつとして与えることで水分補給できます。ただし与えすぎには注意してください。

ペット用経口補水液・氷を活用する
市販のペット用経口補水液(塩分・糖分を調整したもの)を水に少量混ぜると飲みやすくなる場合があります。氷を浮かべた水を好む犬も多いです。

注意点:人間用のスポーツドリンクは塩分・糖分が高く与えないでください。


夏バテ予防の生活管理

室温・湿度の管理

エアコンを活用して室温を25〜28℃に保つのが基本です。湿度は60%以下(理想は50%前後)を目標にしましょう。犬は足の裏の汗腺と口呼吸でしか体温を調節できないため、湿度が高いと放熱効率が大きく下がります。

留守番中もエアコンをつけたままにし、犬が自由に涼しい場所に移動できるようにしてあげましょう。

散歩の時間帯を変える

真夏の日中(10〜15時)は路面温度が60℃を超えることもあり、肉球のやけどと熱中症のリスクが高まります。散歩は早朝(日の出後1〜2時間以内)か夕方以降(日没後30分以上経ってから)にしましょう。路面に手を当てて「5秒触っていられない」なら歩かせないのが目安です。

短頭種・老犬・肥満犬は特に注意

ブルドッグ・パグ・フレンチブルドッグなどの短頭種は呼吸による放熱効率が低く、夏バテ・熱中症リスクが特に高いです。老犬・肥満犬・心臓病や呼吸器疾患がある犬も同様に配慮が必要です。

体重1kgあたりの水分目安チェック

体重1日の水分目安
3kg150〜180ml
5kg250〜300ml
10kg500〜600ml
15kg750〜900ml

この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。

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この記事は一般的な獣医学知識に基づく情報提供を目的としており、獣医師の診察に代わるものではありません。 個々の状態は異なるため、少しでも不安がある場合は動物病院を受診してください。