梅雨に増える犬の外耳炎 — 湿気対策と耳のケア方法
この記事は獣医師の監修を受けています
梅雨の時期になると動物病院への来院が急増する疾患のひとつが外耳炎(がいじえん)です。犬の外耳炎は犬全体の約10〜20%が罹患しているとされ、梅雨(6〜7月)は発症・悪化のピークです。高温多湿の環境は耳の中の細菌やマラセチア(酵母菌の一種)の増殖を促し、耳の炎症を引き起こします。放置すると中耳炎・内耳炎に進行し、聴力低下や平衡感覚の障害を招くこともあります。この記事では梅雨の外耳炎の原因、予防法、耳のケア方法をまとめます。
なぜ梅雨に外耳炎が増えるのか
1. 高湿度による耳内環境の悪化
犬の外耳道はL字型に曲がっており、奥の空気が入れ替わりにくい構造です。梅雨の高湿度(70%以上)では耳の中が蒸れやすく、細菌やマラセチアが繁殖しやすい環境になります。
2. 雨による耳への水の侵入
散歩中の雨や水たまり、シャンプー後の水分が耳に残ると、外耳道が湿った状態が続き感染リスクが上がります。
3. アレルギーの悪化
梅雨はカビ(真菌)の繁殖が活発になるため、カビアレルギーのある犬では皮膚炎とともに外耳炎が悪化します。ハウスダストマイトも高湿度で増殖します。
外耳炎になりやすい犬の特徴
- 垂れ耳の犬種:コッカー・スパニエル、ゴールデン・レトリーバー、ビーグル、ダックスフンドなど。耳が蓋のように覆い通気性が悪い
- 耳道に毛が多い犬種:プードル、シュナウザーなど。毛が湿気をため込む
- 皮脂分泌が多い犬種:シャー・ペイ、ブルドッグなど
- アレルギー体質の犬:アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの犬は外耳炎を併発しやすい(約50〜80%)
外耳炎の症状
初期症状を見逃さないことが重要です。
初期
- 耳をかく回数が増えた
- 頭を振る回数が増えた
- 耳のにおいが強くなった
- 耳垢の量が増えた(茶色〜黒色)
中期
- 耳の中が赤く腫れている
- ベタベタした耳垢や黄色〜緑色の膿が出る
- 耳を触ると痛がる・嫌がる
- 頭を傾けている
重症(中耳炎・内耳炎への進行)
- 耳から膿や血が出る
- 顔が傾いたまま戻らない(斜頸:しゃけい)
- ふらふらして真っ直ぐ歩けない
- 目が左右に揺れている(眼振:がんしん)
- 食欲低下・元気消失
今すぐ病院に行くべきサイン
以下が一つでも当てはまる場合はすぐに動物病院へ。
- 耳から膿や血が出ている
- 耳を触ると悲鳴をあげるほど痛がる
- 頭が傾いたままになっている
- ふらつき・旋回運動がある
- 耳が急激に腫れ上がっている(耳血腫の可能性:耳を激しく振ることで耳介の血管が破れ血液がたまる状態)
- 食欲がない・ぐったりしている
- 発熱がある
様子見してよい場合
以下をすべて満たす場合は、自宅でのケアと経過観察を2〜3日試してみることができます。
- たまに耳を掻く程度でかゆみが軽い
- 耳垢はやや増えているが膿や出血はない
- 耳のにおいが少し気になる程度
- 食欲・元気が正常
- 頭の傾きやふらつきがない
ただし、外耳炎は再発しやすい疾患です。症状が軽くても1週間以上続く場合や、過去に外耳炎の治療歴がある犬は早めに受診しましょう。
自宅でできる湿気対策と耳のケア
耳のケアの基本
- 週1〜2回の耳チェック:耳を裏返して赤み・腫れ・耳垢の量・においを確認
- 耳掃除は月1〜2回:犬用のイヤークリーナーを使い、優しく拭き取る。綿棒は耳の奥に汚れを押し込むリスクがあるため、コットンやガーゼを指に巻いて見える範囲を拭くのが安全
- 過度な耳掃除は逆効果:毎日ゴシゴシ掃除すると外耳道の皮膚を傷つけ、かえって感染リスクが上がる
イヤークリーナーの正しい使い方
- イヤークリーナーを耳の穴に数滴垂らす
- 耳の付け根を20〜30秒ほど優しくもみほぐす(クチュクチュという音がする)
- 犬に頭を振らせて汚れを排出させる
- 出てきた汚れをコットンやガーゼで拭き取る
- 奥まで拭こうとしない(見える範囲のみ)
散歩後の耳ケア
- 雨の日の散歩後:帰宅したら耳の中をコットンで軽く拭いて水分を除去
- 水遊びの後:必ず耳の中の水分を拭き取る。イヤークリーナーで洗浄すると効果的
室内の湿度管理
- 除湿機やエアコンのドライ機能を活用:室内湿度を50〜60%に保つ
- 換気を心がける:天気が良い日は窓を開けて風を通す
- ベッド周辺の湿気対策:犬のベッドや寝具は風通しの良い場所に置き、定期的に天日干しまたは乾燥機で乾かす
トリミング
耳道に毛が多い犬種は、定期的に耳毛を処理して通気性を確保します。ただし、自宅での耳毛抜きは炎症を起こすリスクがあるため、トリマーや獣医師に任せることをおすすめします。
病院に行くときの準備
- 耳の中の写真を撮る:赤み、腫れ、耳垢の色・量を記録。左右の比較ができると有用
- 症状の経過をメモ:いつから・どちらの耳を・どの程度かゆがるか
- 耳掃除の頻度と使用している製品を記録:イヤークリーナーの商品名、ケアの頻度
- アレルギーの有無を伝えられるように:皮膚のかゆみや食物アレルギーの既往歴
- 過去の外耳炎の治療歴を整理:いつ・どんな薬で治療したか、再発の頻度
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。