犬の耳垢の色でわかる原因 — 正常な色と異常な色

犬の耳垢が多い・黒い — 色で分かる原因と病院に行く目安

この記事は獣医師の監修を受けています

愛犬の耳を見たら耳垢がたくさんたまっていた、しかも色が黒い——こうした変化に不安を感じる飼い主さんは多いでしょう。犬の耳垢は健康のバロメーターで、色・量・質感から耳の中の状態をある程度推測できます。正常な耳垢は薄黄色〜薄茶色で少量ですが、黒い耳垢や大量の耳垢は何らかのトラブルのサインです。この記事では耳垢の色ごとの原因と、病院に行くべきタイミングを整理します。


耳垢の色でわかる原因の目安

薄黄色〜薄茶色で少量 → 正常

健康な犬の耳垢はうっすら黄色〜薄茶色で、においはほぼありません。少量であれば問題なく、耳の自浄作用で自然に排出されます。

こげ茶〜黒いベタベタした耳垢 → マラセチア感染(酵母菌)の可能性

マラセチア(酵母菌の一種)が過剰繁殖すると、こげ茶〜黒っぽいベタベタした耳垢が大量に出ます。甘酸っぱい発酵臭を伴うことが多いです。垂れ耳の犬種やアレルギー体質の犬に多く、湿度の高い梅雨〜夏場に悪化しやすい傾向があります。

黒いカサカサ・ボロボロの耳垢 → 耳ダニの可能性

耳ダニ(ミミヒゼンダニ)が寄生すると、コーヒーかすのような黒くて乾いた耳垢が大量にたまります。マラセチアのベタベタした耳垢と違い、乾燥してポロポロしているのが特徴です。激しいかゆみを伴い、犬が後ろ足で猛烈に耳を掻きます。子犬や他の動物と接触がある犬に多いです。

黄色〜緑色のドロッとした耳垢 → 細菌感染の可能性

細菌感染が進行すると、膿のような黄色〜緑色のドロッとした耳垢(耳だれ)が出ます。強い悪臭を伴い、耳を触ると痛がることが多いです。特に緑膿菌に感染した場合は治療が長引く傾向があります。

赤みを帯びた耳垢・血が混じる → 外傷・重度の炎症

掻きすぎによる傷、外耳道のポリープ(耳の中にできるできもの)、腫瘍などが原因で耳垢に血液が混じることがあります。


耳垢が増える原因

1. アレルギー

食物アレルギーやアトピー性皮膚炎は耳垢増加の根本原因としてもっとも多いです。耳の中の皮膚に炎症が起き、皮脂の分泌が増え、それをエサにマラセチアや細菌が繁殖します。耳だけでなく体の他の部分にもかゆみがある場合はアレルギーを強く疑います。

2. 耳の構造(犬種特性)

垂れ耳の犬種は耳の中の通気性が悪く蒸れやすいため、耳垢がたまりやすいです。また、トイプードルやシーズーのように耳の中に毛が多い犬種は、毛に耳垢が絡まって排出されにくくなります。

3. 過剰な耳掃除

意外かもしれませんが、耳掃除のやりすぎも耳垢が増える原因になります。耳の中の皮膚が刺激を受けて炎症を起こし、防御反応として耳垢の分泌が増えるためです。健康な耳であれば月1〜2回の掃除で十分です。


今すぐ病院に行くべきサイン

以下のいずれかに当てはまる場合は受診してください。

  • 黒い耳垢が掃除しても翌日に同じ量たまる
  • 耳垢に血液が混じっている
  • 黄色〜緑色の膿状の耳だれがある
  • 強い悪臭がする
  • 耳を触ると痛がる・怒る
  • 耳の入り口が腫れて赤い
  • 頭を傾けている、まっすぐ歩けない
  • かゆみがひどく耳の周りに掻き傷がある
  • 他の犬・猫と同居しており、耳ダニの感染が疑われる

様子見してよい場合

以下のすべてを満たすときは、耳掃除を行ったうえで3〜5日の経過観察が可能です。

  • 耳垢の色が薄茶色〜茶色で、量がいつもより少し多い程度
  • においが軽いか、ほぼない
  • 耳を掻く・頭を振る仕草がない、またはごく軽い
  • 耳の中の皮膚がピンク色で腫れていない
  • 掃除した後は耳垢がたまるペースが遅い(3日以上きれい)

自宅でできるケア

耳垢の正しい拭き取り方

コットンやガーゼにイヤークリーナーを染み込ませ、耳の見える範囲の耳垢をやさしく拭き取ります。奥まで指やコットンを入れる必要はありません。見える範囲で十分です。

耳の中の通気性を確保する

垂れ耳の犬は、暑い日や湿度が高い日に耳を軽くめくって風を通してあげるだけでも効果があります。シャンプー後は耳の入り口の水分をしっかり拭き取ってください。

綿棒は使わない

犬の耳道はL字型に曲がっています。綿棒を入れると汚れを奥に押し込んだり、耳道を傷つけたりするリスクがあります。耳掃除にはコットンまたはガーゼを使いましょう。


病院に行くときの準備

  • 耳垢の写真: 色・質感・量がわかるように撮影(掃除する前に撮る)
  • 左右どちらか: 片耳だけか両耳か
  • 耳垢が増えた時期: いつ頃から量や色が変わったか
  • かゆみの有無と程度: 掻く頻度、頭を振る回数
  • 他の犬猫との接触: 耳ダニの感染経路の判断に必要
  • フードの種類・変更歴: アレルギーの可能性を評価する材料

動物病院では耳鏡で耳道を観察し、耳垢を顕微鏡で検査します。マラセチアの菌体・細菌・耳ダニの虫体や卵の有無を確認し、原因に応じた治療を行います。マラセチア感染であれば抗真菌薬の点耳薬、細菌感染であれば抗菌薬の点耳薬、耳ダニであれば駆虫薬(スポットオンタイプや内服薬)が処方されます。アレルギーが根本原因と判明した場合は、食事療法や長期的なアレルギー管理が必要になります。治療期間は軽度で1〜2週間、慢性化している場合は1〜3か月程度です。


この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。

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この記事は一般的な獣医学知識に基づく情報提供を目的としており、獣医師の診察に代わるものではありません。 個々の状態は異なるため、少しでも不安がある場合は動物病院を受診してください。