猫の外耳炎 — 耳を掻く・頭を振る原因と治療法
この記事は獣医師の監修を受けています
猫が後ろ足でしきりに耳を掻いている、頭をブルブル振る、耳を触られるのを嫌がる——これらは外耳炎(がいじえん)のサインかもしれません。猫の外耳炎は犬ほど多くはありませんが、放置すると中耳炎・内耳炎に進行して平衡感覚に影響が出たり、難聴になったりする可能性があります。猫の外耳炎は犬とは原因が異なる部分もあるため、猫に特化した情報を知っておくことが大切です。
猫が外耳炎になる主な原因
1. 耳ダニ(ミミヒゼンダニ)
猫の外耳炎の原因としてもっとも多いのが耳ダニです。特に子猫や外に出る猫、保護猫に多く見られます。耳ダニが寄生すると激しいかゆみが起き、黒〜暗褐色のボロボロした乾いた耳垢が大量にたまります。両耳に症状が出ることが多く、他の猫への接触感染で広がるため多頭飼育環境では要注意です。
2. 細菌・酵母菌の感染
耳の中で細菌やマラセチア(酵母菌)が過剰繁殖して炎症を起こします。犬に比べると猫ではマラセチア感染の頻度はやや低いですが、アレルギーやポリープなどの基礎疾患がある場合に二次的に発生することがあります。茶色〜黄色のベタベタした耳垢やにおいを伴います。
3. アレルギー(食物・環境)
猫もアレルギーが原因で外耳炎を起こすことがあります。食物アレルギーやアトピー性皮膚炎があると耳の中の皮膚のバリア機能が低下し、二次感染を起こしやすくなります。耳だけでなく、頭や首の周りを過度に掻く・毛が薄くなるなどの症状を伴う場合はアレルギーの可能性があります。
猫の外耳炎の特徴的な症状
猫の外耳炎には以下のような症状が見られます。
- 後ろ足で耳を頻繁に掻く
- 頭をブルブル振る
- 耳を触ろうとすると嫌がる・怒る
- 耳から茶色や黒い耳垢が出る
- 耳のにおいがきつくなる
- 耳の入り口が赤く腫れている
- 頭を傾けている(片側に首をかしげている状態)
- 耳を掻きすぎて耳の後ろに脱毛・かさぶたがある
猫は犬に比べて痛みやかゆみを隠す傾向があります。「なんとなく耳を気にしている」程度の変化でも注意深く観察してください。
今すぐ病院に行くべきサイン
以下のいずれかに当てはまる場合は早めに受診してください。
- 耳を掻く頻度が急に増え、耳の後ろや首に掻き傷ができている
- 黒い耳垢が大量にある(耳ダニの可能性 — 駆虫薬が必要)
- 黄色〜緑色の膿状の耳だれが出ている
- 耳から強い悪臭がする
- 耳を触ると痛がって鳴く・噛もうとする
- 頭を一方に傾けたまま直らない(中耳炎の可能性)
- 耳の周りが腫れている
- ふらつく・まっすぐ歩けない(内耳炎の可能性)
- 1週間以上症状が続いている
猫の耳ダニは自然治癒しません。市販の点耳薬では十分に駆除できないことが多いため、動物病院での処方薬が必要です。
様子見してよい場合
以下のすべてを満たすときは、2〜3日の自宅観察が可能です。
- 耳を軽く掻く程度で、傷や脱毛がない
- 耳垢の量がいつもより少し多い程度で、色は薄茶色
- 耳の中が薄いピンク色で明らかな腫れはない
- においがほとんどない
- 頭を傾ける・ふらつくなどの症状がない
- 食欲・元気が普段通り
ただし、同居猫がいて耳ダニが疑われる場合は、症状が軽くても早めの受診をお勧めします。感染拡大を防ぐためです。
自宅でできるケア
耳の状態を観察する
猫の耳の中をやさしく確認します。耳たぶを軽くめくり、耳の入り口を見てください。赤み・腫れ・耳垢の色と量・においを確認します。嫌がる場合は無理に見ようとせず、次の通院時に獣医師に相談しましょう。
自己判断での耳掃除は慎重に
猫は犬に比べて耳掃除を嫌がる個体が多く、無理に行うと暴れてケガをするリスクがあります。外耳炎の疑いがある場合は、自宅での耳掃除より先に動物病院で原因を特定してもらうことをお勧めします。獣医師から耳掃除の指示があった場合は、処方されたクリーナーを使い、見える範囲の汚れだけをコットンでやさしく拭き取ってください。
掻き傷の悪化を防ぐ
耳を掻きすぎて傷ができている場合は、エリザベスカラーの装着を検討してください。猫の爪で耳介(耳たぶ)の内側に傷がつくと、耳血腫(耳の中に血液がたまって腫れる状態)を起こすことがあります。
多頭飼育の場合
外耳炎の猫がいる場合は、寝床やタオルの共有を避け、他の猫との濃密な接触を減らしてください。耳ダニが原因の場合は同居猫にも感染している可能性が高いため、全頭を一緒に診てもらうのが理想的です。
病院に行くときの準備
- 症状の経過メモ: いつから耳を掻くようになったか、悪化しているか
- 耳垢の写真: 色と質感がわかるように撮影
- 左右どちらか: 片耳だけか両耳かを確認
- 同居猫の有無と健康状態: 耳ダニの感染拡大を判断する情報
- 外出の有無: 完全室内飼いか外に出ることがあるか
- ワクチン・駆虫歴: 過去の治療歴を伝える
動物病院では耳鏡で耳道を観察し、耳垢の顕微鏡検査(耳ダニ・マラセチア・細菌の確認)を行います。耳ダニであればセラメクチンやイベルメクチンなどの駆虫薬、細菌感染であれば抗菌点耳薬、マラセチアであれば抗真菌点耳薬が処方されます。耳ダニの駆虫は通常1〜2回の投薬で済みますが、卵が残っている可能性があるため2〜3週間後に再検査を行います。アレルギーが原因の場合は、長期的な食事管理やアレルギー治療が必要になることがあります。
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。