猫の耳ダニ(ミミヒゼンダニ)— 症状・治療・他の猫への感染予防
この記事は獣医師の監修を受けています
猫が耳を猛烈に掻いている、黒い耳垢が大量に出る、頭をしきりに振る——これらの症状が見られたら耳ダニ(ミミヒゼンダニ、学名: Otodectes cynotis)の寄生を疑ってください。耳ダニは猫の外耳道(耳の穴の中)に寄生する小さなダニで、肉眼ではほぼ見えない大きさ(約0.3〜0.4mm)です。猫の外耳炎の原因としてもっとも多く、特に子猫・保護猫・外に出る猫で発症頻度が高いです。他の猫や犬にも接触感染するため、早期の発見と治療、そして同居動物への対策が重要です。
耳ダニの症状
典型的な症状
- 激しいかゆみ: 後ろ足で耳を猛烈に掻く。掻く頻度が1日に何十回にもなることがあります
- 黒い耳垢: コーヒーかすのような黒〜暗褐色の乾いたボロボロの耳垢が大量にたまる
- 頭を振る: 頻繁に頭をブルブル振る
- 耳の赤み: 耳の入り口〜耳道が赤く炎症を起こす
- 掻き傷: 耳の後ろや首の周辺に掻き傷・脱毛・かさぶたができる
重症化した場合
- 耳血腫(じけっしゅ): 掻きすぎて耳介(耳たぶ)の内部に血液がたまり、耳がパンパンに腫れる
- 中耳炎・内耳炎への進行: 頭を傾ける、ふらつく、食欲低下
- 皮膚への拡大: まれに耳以外の部位(首・背中)にもダニが移動してかゆみを起こすことがある
耳ダニの感染経路
猫から猫への直接接触
もっとも多い感染経路です。猫同士が体を擦りつけ合う、一緒に寝る、グルーミングし合うといった日常的な接触で簡単にうつります。母猫から子猫への感染も非常に多いです。
犬など他の動物からの感染
耳ダニは猫だけでなく犬にも寄生します。猫と犬が同居している場合、お互いに感染し合うことがあります。
環境からの感染
耳ダニは宿主(猫)から離れても短期間(数日〜2週間程度)は生存できます。感染した猫が使っていた寝床やブラシを介して感染することもあります。ただし人間への寄生はまれで、一時的にかゆみが出ても定着はしません。
今すぐ病院に行くべきサイン
耳ダニが疑われる場合は、基本的に早めの受診を推奨します。特に以下の場合は急いでください。
- 黒い耳垢が大量に出ている(耳ダニは自然治癒しない)
- 耳を掻きすぎて耳の後ろに出血やかさぶたがある
- 耳がパンパンに腫れている(耳血腫の可能性)
- 頭を傾けている・ふらつく(中耳炎の可能性)
- 子猫で食欲が落ちている
- 同居猫が複数いる(早期に全頭治療しないと感染が広がる)
耳ダニは市販の耳掃除だけでは駆除できません。必ず獣医師から処方される駆虫薬で治療してください。
様子見してよい場合
耳ダニは自然治癒しないため、基本的に「様子見」は推奨しません。ただし以下の条件を満たす場合は、数日以内の受診を目標にスケジュールを調整できます。
- 耳垢の量がまだ少なく、かゆみが軽い
- 掻き傷や耳の腫れがない
- 食欲・元気が普段通り
- 同居猫がいない(感染拡大のリスクが低い)
この場合でも1週間以内には受診してください。放置すると症状が悪化し、治療期間が長引きます。
自宅でできるケアと感染予防
耳掃除で症状を少し楽にする
受診までの間、見える範囲の黒い耳垢をコットンでやさしく拭き取ることでかゆみを少し和らげられます。ただしこれは一時的な対症療法であり、ダニの駆除にはなりません。綿棒は耳の奥に入れないでください。
エリザベスカラーで掻き傷を防ぐ
激しく掻いて傷ができている場合は、エリザベスカラーを装着して傷の悪化を防ぎます。耳血腫は一度発症すると治療が大変なので、予防が大切です。
同居動物の管理
耳ダニと診断された猫がいる場合は、同居しているすべての猫と犬を同時に治療する必要があります。1匹だけ治療しても、未治療の動物から再感染するためです。
環境の清掃
感染した猫が使っていた寝床やベッドカバーを洗濯し、ブラシやおもちゃも洗浄してください。60度以上のお湯で洗うか、洗濯後に乾燥機で熱を加えるとより効果的です。
定期的な予防駆虫
耳ダニの再感染を防ぐために、月1回のスポットオン駆虫薬(首の後ろに垂らすタイプの薬)を継続することが推奨されます。これはノミ・マダニ予防も兼ねる製品が多いため、定期的な投与で総合的な寄生虫予防ができます。外に出る猫や多頭飼育の場合は特に重要です。
病院に行くときの準備
- 耳垢の写真: 黒い耳垢の量と質感がわかるように撮影
- 症状の経過: いつから掻くようになったか、悪化しているか
- 同居動物の情報: 猫・犬の頭数と、他の動物に症状が出ているか
- 外出の有無: 完全室内飼いか外に出ることがあるか
- 保護猫の場合: いつ・どこから迎えたか
- 現在使用中の駆虫薬: 製品名と最後に使用した日
動物病院では耳垢を採取して顕微鏡で観察し、耳ダニの成虫・幼虫・卵を確認して診断します。治療はセラメクチンやモキシデクチンを含むスポットオン駆虫薬の投与が主流で、通常1回の投与で成虫は駆除できますが、卵から孵化するダニに対応するため2〜4週間後に再投与が行われることが多いです。耳の炎症がひどい場合は、駆虫薬に加えて耳洗浄や抗炎症点耳薬が併用されます。完治の確認には治療開始から3〜4週間後に再度顕微鏡検査を行います。治療費は1回の診察・投薬で3,000〜8,000円程度が目安です(複数回の通院が必要な場合あり)。
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。