犬の歯ぐきが赤い・腫れている — 歯肉炎の原因と治療
この記事は獣医師の監修を受けています
愛犬の歯ぐきがいつもより赤い、触ると腫れている気がする——そんなとき、歯肉炎(しにくえん)が起きている可能性があります。歯肉炎は歯周病の初期段階で、この時点で適切に対処すれば完全に治すことができます。しかし放置すると歯周炎へ進行し、歯を支える骨が溶けて元に戻らなくなります。この記事では犬の歯肉炎の原因・見分け方・治療法について解説します。
犬の正常な歯ぐきの色
まず、健康な犬の歯ぐきの状態を知っておくことが大切です。
- 正常な色:サーモンピンク〜薄いピンク色(色素沈着で黒い部分がある犬種もいます)
- 正常な表面:滑らかで湿っている
- CRT(毛細血管再充填時間):歯ぐきを指で2秒間押して離したとき、白くなった部分が2秒以内にピンクに戻れば正常
歯ぐきが赤くなる・腫れる原因
1. 歯肉炎(最多)
歯垢中の細菌が歯ぐきに炎症を引き起こした状態です。犬の歯垢は食後6〜8時間で形成され始めるため、デンタルケアを怠ると短期間で歯肉炎に発展します。歯と歯ぐきの境目(歯頸部)が赤くライン状に腫れるのが特徴です。
2. 歯石の沈着
歯垢が3〜5日で石灰化して歯石になると、歯石の粗い表面がさらに歯垢を蓄積させ、歯ぐきへの刺激が強まります。歯石が歯ぐきの下まで入り込む(縁下歯石)と、見た目以上に炎症が進んでいることがあります。
3. 異物による外傷
木の棒の破片・骨の欠片・硬いおもちゃの破損片などが歯ぐきに刺さる・挟まることで局所的な赤み・腫れが生じます。片側だけ・1〜2本の歯の周囲だけに赤みがある場合はこの可能性を考えます。
4. 歯の破折(はせつ)
歯が割れたり欠けたりすると、露出した歯髄(しずい:歯の神経と血管がある部分)から細菌が侵入し、周囲の歯ぐきが赤く腫れます。硬い蹄(ひづめ)や骨・石を噛んだ後に起こりやすいです。
5. 腫瘍
歯ぐきにできる腫瘍(エプリス、悪性黒色腫、扁平上皮癌など)も赤み・腫れとして現れることがあります。片側だけに急速に大きくなるしこりがある場合は注意が必要です。
今すぐ病院に行くべきサイン
以下が一つでも当てはまる場合はすぐに動物病院へ。
- 歯ぐきから大量に出血している
- 歯ぐきに明らかなしこり・できものがある
- 顔が腫れている(歯根膿瘍が疑われる)
- 口を開けられない・激しく痛がる
- 歯ぐきが白い・紫色・黒ずんでいる
- 食事を2日以上まったく食べない
- 膿のようなにおいがする・膿が出ている
- 歯がぐらぐらしている、または抜けた
様子見してよい場合
以下をすべて満たす場合は、まず自宅で様子を見ることができます。
- 歯ぐきの赤みが軽度で、歯と歯ぐきの境目にうっすら赤いラインがある程度
- 出血はない
- 食欲・元気は通常通り
- 口を触っても激しく嫌がらない
- しこりや腫れ物は見当たらない
ただし、歯肉炎は自然には治りません。「様子見OK」の状態でも2〜4週間以内に一度歯科検診を受けることを推奨します。
自宅でできるケア
歯みがきの強化
歯肉炎の段階であれば、丁寧な歯みがきだけでも改善が期待できます。
- 毎日1回の歯みがきを目標に
- 歯ぐきが赤く腫れている部分はやさしく、でもしっかり磨く:歯ぐきと歯の境目に45度の角度で歯ブラシを当てる
- 出血しても軽度であれば磨き続けてOK:炎症が治まると出血も減る
- 犬用歯みがきペーストを使う(人間用は絶対にNG)
歯ぐきの観察を習慣にする
週1回、愛犬の唇をめくって歯ぐきの色・腫れ・出血をチェックしましょう。
- 上顎の奥歯(第4前臼歯)の外側は歯石がつきやすいポイント
- 下顎の前歯(切歯)の内側も見落としやすい部位
硬すぎるものを避ける
歯の破折を予防するため、以下は与えないか注意して与えてください。
- 蹄(ひづめ)、鹿の角、石
- 硬すぎる骨(加熱した鳥の骨は絶対NG)
- 目安:爪で押して凹まないほど硬いものは歯が割れるリスクあり
病院に行くときの準備
- 赤みや腫れに気づいた時期:いつ頃から・どの部位かをメモ
- 歯ぐきの写真を撮る:唇をめくって赤みのある部位を撮影
- デンタルケアの状況:歯みがきの頻度・使っているグッズ
- 与えているおやつ・おもちゃ:硬いものを噛んだ心当たりがないか
- 保険証を持参:歯科検査・処置は麻酔を伴うことがあり費用がかかりやすい
歯肉炎の治療は、軽度であれば歯石除去(スケーリング)と研磨(ポリッシング)で大きく改善します。全身麻酔が必要なため、事前に血液検査などの術前検査が行われます。費用は一般的に2〜5万円程度です。
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。