猫の血尿 — 原因とすぐに病院に行くべきケース
この記事は獣医師の監修を受けています
猫のトイレを掃除していたらおしっこがピンク色だった、ペットシーツに赤い点がついていた——猫の血尿は飼い主にとって驚きと不安を感じる症状です。猫は泌尿器トラブルが非常に多い動物で、特に1〜10歳の猫では「猫下部尿路疾患(FLUTD)」として知られるさまざまな原因で血尿が起こります。この記事では血尿の原因と、緊急度の見極め方をまとめます。
猫の血尿の主な原因
1. 特発性膀胱炎(FIC)— 最多
猫の血尿の約55〜65%はこの「特発性膀胱炎(とくはつせいぼうこうえん)」が原因です。「特発性」とは「はっきりした原因が特定できない」という意味で、ストレスが大きく関与していると考えられています。引っ越し・来客・多頭飼い・トイレの汚れなど、環境の変化がきっかけで発症することが多く、オスにもメスにも同程度に見られます。
2. 尿路結石
膀胱や尿道にできた結石が粘膜を傷つけて出血します。猫に多い結石は「ストルバイト結石」と「シュウ酸カルシウム結石」の2種類で、合わせて猫の尿路結石の約90%を占めます。結石の種類によって治療法が異なるため、正確な診断が重要です。
3. 尿道閉塞
結石や尿道栓子(にょうどうせんし=タンパク質や結晶が固まったもの)が尿道に詰まった状態です。オス猫は尿道が細いため圧倒的にかかりやすく、完全に詰まるとおしっこがまったく出なくなります。24時間以内に命にかかわる緊急疾患です。
4. 細菌性膀胱炎
猫では犬ほど一般的ではなく、膀胱炎全体の約2〜5%程度です。ただし10歳以上の高齢猫や、糖尿病・腎臓病がある猫では細菌感染が増えます。
5. 膀胱腫瘍
猫では犬より少ないものの、高齢猫(12歳以上)で血尿が長期間続く場合は腫瘍の可能性を考慮する必要があります。
今すぐ病院に行くべきサイン
以下が一つでも当てはまる場合は緊急です。すぐに動物病院へ向かってください。
- トイレに何度も行くがおしっこがまったく出ない(特にオス猫)
- 排尿ポーズのまま長時間いきんで鳴き声を上げる
- ぐったりして動かない・嘔吐がある
- 丸1日(24時間)以上おしっこが確認できない
- 陰部を執拗に舐め続けている
- お腹を触ると痛がる・硬く張っている
- 真っ赤な血液がぽたぽた垂れている
特にオス猫で「トイレに行くが出ない」状態は尿道閉塞の可能性が高く、夜間・休日でも救急受診が必要です。 尿毒素(にょうどくそ)が体内に蓄積すると、高カリウム血症(こうカリウムけっしょう)により心臓が停止するリスクがあります。
様子見してよい場合
以下のすべてに当てはまる場合は、翌日の受診でも問題ないことが多いです。
- おしっこは出ている(量がやや少ない程度)
- 尿の色がうすいピンク〜オレンジ程度で真っ赤ではない
- 食欲・元気ともに普段と大きく変わらない
- 排尿時に激しい痛がりがない
- トイレの回数が普段の2倍以内に収まっている
- お腹の張りや嘔吐がない
ただし、翌日には必ず受診してください。猫の泌尿器トラブルは急速に悪化することがあり、「様子見」は最長でも1日が目安です。
自宅でできるケアとストレス対策
水分摂取を増やす
- ウェットフードの割合を増やす:ドライフードのみの猫はウェットフード併用で水分摂取量が約50%増加するとされています
- 流れる水の給水器を設置:猫は動く水を好む傾向があり、飲水量が増えやすい
- 水飲み場を複数設置:フードの隣ではなく離れた場所に、家の中に3か所以上が理想
トイレ環境の改善
- トイレの数は「猫の数+1」:2匹なら3つが目安
- こまめな掃除:1日2回以上の清掃が推奨
- 猫砂の種類を変えてみる:鉱物系の細かい砂を好む猫が多い
- 静かで落ち着ける場所に設置:洗濯機の横や人通りの多い場所は避ける
ストレス軽減
- 隠れ場所を用意:キャットタワーの上段や段ボール箱など、猫が安心できるスペースを確保
- 生活リズムを一定に:食事・遊びの時間を毎日同じにする
- フェリウェイ(猫用フェロモン製品)の使用:ストレス軽減に効果があるとされる合成フェロモン
病院に行くときの準備
- 尿の採取を試みる:システムトイレの場合、トレーの受け皿から採取可能。採取できなくても病院で採れるので心配不要
- トイレの写真を撮る:血尿がついたペットシーツや猫砂の写真は色の判断に役立つ
- 排尿の回数・頻度をメモ:いつから血尿が始まったか、1日何回トイレに行くか
- 最近の環境変化を整理:引っ越し・新しい猫・来客・模様替えなど、ストレス要因になりそうな出来事
- フードの種類と飲水量:普段の食事内容と、最近の水の飲み方に変化がないか
病院では尿検査(試験紙・沈渣=顕微鏡検査)が基本で、必要に応じてエコー検査・レントゲン・血液検査を行います。初診では5,000〜20,000円程度が目安です。
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。