猫がおしっこを出せない — 尿道閉塞は24時間以内に命の危険
この記事は獣医師の監修を受けています
猫がトイレに何度も行くのにおしっこが出ない——この症状は「尿道閉塞(にょうどうへいそく)」の可能性があり、猫の救急疾患の中でも特に緊急度が高い状態です。完全に尿道が詰まると、体内に老廃物や毒素が急速に蓄積し、24〜48時間以内に急性腎不全や心停止を引き起こすことがあります。特にオス猫はメス猫に比べて尿道が細く長いため、圧倒的に発症リスクが高い疾患です。この記事では原因と緊急時の対処、予防策をまとめます。
猫がおしっこを出せなくなる主な原因
1. 尿道栓子(にょうどうせんし)— 最多
尿中のタンパク質・結晶・炎症細胞などが固まってゼリー状の塊となり、尿道を塞ぎます。猫の尿道閉塞の約50〜60%はこの尿道栓子が原因です。特発性膀胱炎(FIC)に伴って発生することが多く、ストレスが大きな引き金になります。
2. 尿路結石
ストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石の小さな粒が尿道に詰まるケースです。尿道閉塞全体の約20〜30%を占めます。食事内容(ミネラルバランスやpH)が結石の形成に大きく関与します。
3. 尿道の炎症・腫れ
膀胱炎がひどくなると、尿道の粘膜が腫れて通り道が極端に狭くなります。結石や栓子がなくても、腫れだけで排尿困難になることがあります。
4. 尿道狭窄(きょうさく)
過去に尿道閉塞の治療でカテーテルを入れた際の損傷や、慢性的な炎症で尿道が瘢痕化(はんこんか=硬く縮む)して狭くなった状態です。繰り返し閉塞する猫に多い原因です。
今すぐ病院に行くべきサイン
以下が一つでも当てはまる場合は一刻も早く動物病院を受診してください。
- トイレに何度も行くがおしっこが一滴も出ない
- トイレの中やトイレの外で排尿ポーズのまま鳴く
- 6時間以上おしっこが出ていない
- お腹(膀胱のあたり)がパンパンに張って硬い
- ぐったりして動かない・呼びかけに反応が薄い
- 嘔吐を繰り返している
- 体温が下がっている(耳や足先が冷たい)
- 口の粘膜が白っぽい、または青紫色
これは「明日まで待てる」症状ではありません。 夜間・休日であっても必ず救急対応の動物病院を受診してください。尿が溜まり続けると血中のカリウム値が上昇し(高カリウム血症)、心臓の電気的な活動が乱れて致死的な不整脈を起こします。
閉塞から死亡までの時間の目安:
- 12時間:腎機能の低下が始まる
- 24時間:尿毒症の症状(嘔吐・ぐったり)が明確に
- 36〜48時間:高カリウム血症による心停止のリスクが急激に上昇
様子見してよい場合
以下のすべてに当てはまる場合に限り、数時間〜翌朝の受診が許容されることがあります。
- おしっこは少量でも出ている(完全閉塞ではない)
- 食欲がある・水を飲んでいる
- 嘔吐やぐったりした様子がない
- 排尿時に多少いきむが、極端な痛がりではない
- お腹に異常な張りを感じない
ただし、オス猫の排尿困難は急激に悪化することが多いため、「少し出ているから大丈夫」と油断せず、できるだけ早く受診することを強くおすすめします。
自宅でできる応急処置
尿道閉塞は自宅で解消できる症状ではありません。以下は病院に向かうまでの間の対応です。
絶対にやってはいけないこと
- お腹を押して無理に尿を出そうとしない:膀胱破裂のリスクがあります
- 自力でカテーテルを挿入しない:尿道を損傷します
- 「様子を見よう」と待たない:特にオス猫の完全閉塞は時間との戦いです
病院に行くまでにできること
- 静かで暖かい場所で安静にさせる:体温低下を防ぎ、ストレスを最小限に
- 水は少量なら飲ませてOK:ただし嘔吐している場合は誤嚥(ごえん)のリスクがあるため控える
- キャリーケースに入れて移動準備:毛布やタオルで保温しながら搬送
記録を残す
- 最後に正常な量のおしっこが出た日時
- トイレに行く頻度(1時間に何回か)
- 嘔吐の有無・回数
- 食欲や水飲みの変化
- 直近で環境変化やストレス要因がなかったか
病院に行くときの準備
- 最後の排尿時刻を必ずメモ:「いつからまったく出ていないか」は治療の緊急度を判断する最重要情報
- おしっこが出た最後のトイレの写真:量や色の参考になる
- キャリーケースにペットシーツを敷く:移動中に失禁する場合がある
- 普段のフード情報:結石の種類を推測するために食事内容が重要
- 過去の病歴:以前にも尿道閉塞や膀胱炎の治療歴があるか
治療の流れ: 病院では鎮静または麻酔下で尿道カテーテルを挿入し、詰まりを解除して溜まった尿を排出します。その後1〜3日の入院で点滴・血液検査のモニタリングを行うのが一般的です。治療費は入院を含め3〜15万円程度が目安です。再閉塞を繰り返す場合は「会陰尿道造瘻術(えいんにょうどうぞうろうじゅつ)」という、尿道を広げる手術が検討されます。
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。