猫の尿路結石 — ストルバイト・シュウ酸カルシウムの違いと予防食
この記事は獣医師の監修を受けています
猫が血尿を出す、おしっこの回数が増えた、トイレで痛そうにいきんでいる——こうした症状の原因の一つが「尿路結石(にょうろけっせき)」です。猫の尿路結石は大きく分けて「ストルバイト結石」と「シュウ酸カルシウム結石」の2種類があり、合わせて猫の尿路結石の約90%を占めます。この2つは原因も治療法も予防法もまったく異なるため、正確に区別することが大切です。
猫の尿路結石の2大タイプ
ストルバイト結石(リン酸アンモニウムマグネシウム)
- 猫の結石全体の約40〜50%
- 尿がアルカリ性(pH 7.0以上)になると形成されやすい
- 若い猫(1〜6歳)に多い
- 食事療法(処方食)で溶かして治療できる唯一の結石タイプ
- マグネシウム・リン・アンモニアが高濃度で尿中にあると結晶化する
シュウ酸カルシウム結石
- 猫の結石全体の約40〜50%(近年増加傾向)
- 尿が酸性(pH 6.0以下)になると形成されやすい
- 中高齢の猫(7歳以上)に多い
- 食事療法では溶かせないため、大きくなった場合は外科手術が必要
- カルシウムとシュウ酸が高濃度で尿中にあると結晶化する
見分け方
自宅で見分けることはできません。動物病院で採取した結石を成分分析するか、尿検査で結晶の種類を顕微鏡で確認して判別します。レントゲンやエコーでは結石の有無は分かりますが、種類の確定には分析が必要です。
今すぐ病院に行くべきサイン
以下が一つでも当てはまる場合は速やかに受診してください。
- おしっこがまったく出ない(結石が尿道を塞いでいる可能性 → 緊急)
- トイレで激しくいきんで鳴き声をあげる
- 真っ赤な血尿が出ている
- ぐったりして食欲がない・嘔吐がある
- お腹が張って触ると痛がる
- 陰部から血液がにじんでいる
特にオス猫で排尿ができない場合は尿道閉塞の緊急事態です。24時間以内に命にかかわるため、夜間でも救急を受診してください。
様子見してよい場合
以下のすべてに当てはまる場合は、数日以内の受診でも問題ありません。
- おしっこは普通に出ている
- 健康診断や尿検査で「結晶がある」と言われた段階(まだ結石にはなっていない)
- 食欲・元気ともに普段通り
- 血尿や排尿困難の症状がない
- 獣医師から「食事管理で経過観察」と指示されている
ただし、結晶が見つかった段階で放置すると結石に成長するため、食事の切り替えなど獣医師の指示には早めに従いましょう。
自宅でできるケアと食事管理
結石タイプ別の食事戦略
ストルバイト結石の場合:
- 獣医師処方の「尿酸性化フード」を使用:尿のpHを6.0〜6.5に保つ設計
- 溶解期間は約4〜6週間:処方食を続ければ多くのストルバイト結石は溶ける
- マグネシウム・リンが制限された処方食を選ぶ
- 溶けた後も再発予防のために維持食を継続することが推奨
シュウ酸カルシウム結石の場合:
- 食事では溶かせないため、大きな結石は手術で除去
- 再発予防として尿が過度に酸性にならないフード(pH 6.5〜7.0目標)を使用
- カルシウムとシュウ酸の摂取量をコントロールした処方食
- ビタミンCのサプリメントは体内でシュウ酸に変わるため与えない
水分摂取の増加(両タイプ共通・最重要)
尿を薄くして結晶の沈殿を防ぐことが、どちらの結石にも最も有効な予防策です。
- ウェットフード中心の食事:ドライフードのみの猫と比べて尿量が約2倍に増える
- ドライフードに水を加える:フード1に対し水1〜1.5の比率
- 自動給水器の設置:流水タイプは飲水量を増やす効果が高い
- 水飲み場を複数設置:3か所以上、フードとは離れた場所に
やってはいけないこと
- 自己判断で療法食を選ばない:ストルバイト用の酸性化フードをシュウ酸カルシウム結石の猫に与えると逆効果
- ミネラルウォーターを与えない:硬水はカルシウム・マグネシウムが多く結石リスクを上げる(水道水がベスト)
- おやつやトッピングの過剰な追加:処方食のミネラルバランスが崩れる
- 急なフード切り替え:7〜10日かけて徐々に移行する
定期的な尿検査
- 結石治療後は3〜6か月ごとの尿検査が推奨
- 再発率はストルバイトが約50%、シュウ酸カルシウムが約35%と高い
- 早期発見で結石が小さいうちに対処できる
病院に行くときの準備
- 尿を採取して持参:システムトイレの受け皿から採取、またはビーズ砂で代用(採取から2時間以内が理想)
- 食事内容の記録:フードのブランド名・種類(ドライ/ウェット/おやつ含む)をメモ
- 飲水量の変化:普段と比べて水を飲む量が増えた・減ったかの情報
- 排尿の様子:頻尿・いきみ・血尿の有無を時系列でメモ
- 過去の結石歴:以前に結石が見つかったことがあるか、その種類と治療内容
病院では尿検査(結晶の種類の確認)・エコー・レントゲンで結石の有無と大きさを調べます。ストルバイトなら処方食で溶解治療、シュウ酸カルシウムで大きい場合は手術(膀胱切開術)が検討されます。
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。