犬の痙攣・けいれん — 原因と発作時の正しい対処法

犬の痙攣・けいれん — 原因と発作時の正しい対処法

この記事は獣医師の監修を受けています

愛犬が突然体を硬直させてガクガク震え始めた——初めて見る飼い主はパニックになることが多い症状です。犬の痙攣(けいれん)は脳の神経細胞が異常に興奮することで起こり、全身がこわばるものから一部の筋肉がピクピクするものまでさまざまな形があります。多くの場合、発作自体は数十秒〜2分以内に収まりますが、原因によっては命にかかわることもあります。この記事では発作時の正しい対処法と、考えられる原因をまとめます。


犬の痙攣の主な原因

1. てんかん(特発性てんかん)— 最多

犬の繰り返す痙攣の約60〜70%はてんかんが原因です。脳そのものに腫瘍や炎症などの明確な病変がないのに発作が起こるもので、遺伝的な要因が大きいと考えられています。1〜5歳で初発することが多く、ビーグル・ゴールデンレトリバー・ラブラドールレトリバー・ボーダーコリーなどは好発犬種とされています。

2. 脳の構造的疾患

脳腫瘍・脳炎(髄膜脳炎)・水頭症・脳梗塞などが原因で発作が起こります。6歳以上の犬で初めて痙攣が起きた場合は、脳腫瘍の可能性を念頭に精密検査が推奨されます。

3. 中毒

チョコレート・キシリトール(人工甘味料)・ブドウ・殺虫剤・除草剤・人間の薬(鎮痛剤・抗うつ薬)など、犬にとって有害な物質を摂取すると痙攣が起こることがあります。「何か食べたかもしれない」場合は中毒を疑って緊急受診してください。

4. 代謝性の異常

低血糖(特に子犬・小型犬)、肝不全(肝性脳症)、腎不全(尿毒症)、低カルシウム血症(出産後の母犬に多い)など、血液中の成分の異常が脳に影響して発作を引き起こすことがあります。

5. 熱中症

体温が41℃を超えると脳がダメージを受け、痙攣を起こすことがあります。暑い日の散歩後や車内に閉じ込められた後は、熱中症による発作の可能性を最初に考えます。


今すぐ病院に行くべきサイン

以下が一つでも当てはまる場合は緊急です。すぐに動物病院へ。

  • 痙攣が5分以上止まらない(重積発作=じゅうせきほっさ → 脳に不可逆なダメージの危険)
  • 1日に2回以上発作が起きている(群発発作=ぐんぱつほっさ)
  • 発作後30分以上経っても意識がはっきりしない
  • 痙攣中に嘔吐や失禁がある
  • 何か有害なものを食べた可能性がある(中毒の疑い)
  • 初めての痙攣で原因がまったく分からない
  • 発作の直前に頭をぶつけた(頭部外傷の可能性)
  • 体が異常に熱い(熱中症の疑い)

発作が5分以上続く「重積発作」は脳が酸素不足になり、永続的な脳障害や死亡のリスクがあります。時間を計り、5分を超えたら夜間でも救急を受診してください。


様子見してよい場合

以下のすべてに当てはまる場合は、翌日の受診でも問題ないことが多いです。

  • 発作が2分以内に自然に止まった
  • 発作後15〜30分で普段通りの意識・行動に戻った
  • 1日1回の発作で、その後繰り返していない
  • 既にてんかんと診断されており、いつもと同じパターンの発作
  • 中毒や外傷の可能性がない
  • 食欲・水飲みが正常

ただし、初めての発作の場合は「様子見」ではなく、なるべく早く受診して原因を調べることを強くおすすめします。


発作中の正しい対処法

やるべきこと

  • 時間を計る:スマートフォンのタイマーで発作の開始〜終了時刻を記録(最重要)
  • 動画を撮影する:獣医師にとって発作の様子は診断の最重要情報です
  • 周囲の安全を確保:テーブルの角や階段など、ぶつかって怪我をしそうな物を遠ざける
  • 暗くて静かな環境にする:強い光や大きな音は発作を長引かせることがある
  • 発作が収まるまで静かに見守る:多くの発作は1〜2分で自然に止まります

やってはいけないこと

  • 口に手や物を入れない:犬は発作中に舌を飲み込むことはありません。噛まれて大怪我をするリスクがあります
  • 体を無理に押さえつけない:筋肉の強い収縮中に押さえると骨折や脱臼の原因になる
  • 水や食べ物を与えない:意識がない状態では誤嚥(ごえん=気管に入る)の危険
  • 大声で呼びかけたり揺すったりしない:脳への刺激が増え、発作が悪化する可能性

発作後の対応

発作後は「発作後期(ほっさこうき)」と呼ばれる回復期間があり、数分〜数時間、ぼんやりしたりふらついたりすることがあります。これは正常な経過です。静かな場所で休ませ、意識がはっきりしてから少量の水を与えてください。


病院に行くときの準備

  1. 発作の動画:獣医師にとって発作の種類を判断する最も重要な情報です
  2. 発作の記録:開始時刻・持続時間・体のどの部分が動いていたか・意識の有無
  3. 中毒の可能性の確認:チョコレート・薬・洗剤など、口にした可能性があるものを持参
  4. 最近の変化:食欲・行動・ワクチン接種歴・外傷の有無
  5. 既往歴と服薬状況:過去の発作歴・現在飲んでいる薬があればメモ

病院では神経学的検査(反射・歩行・瞳孔のチェック)、血液検査が基本です。脳の病変が疑われる場合はMRI検査を勧められることがあります。初診の費用目安は5,000〜15,000円、MRIは5〜10万円程度です。


この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。

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この記事は一般的な獣医学知識に基づく情報提供を目的としており、獣医師の診察に代わるものではありません。 個々の状態は異なるため、少しでも不安がある場合は動物病院を受診してください。