猫のてんかん — 診断・治療薬・発作の記録方法

猫のてんかん — 症状の特徴と治療・管理方法

この記事は獣医師の監修を受けています

てんかんは脳の神経細胞が異常な電気活動を繰り返す病気で、発作的なけいれんや意識障害を引き起こします。猫のてんかん有病率はおよそ0.5〜3.5%とされ、犬ほど多くはありませんが決して珍しくありません。適切な診断と投薬管理で、多くの猫が発作をコントロールしながら穏やかに暮らすことができます。


てんかんの種類

1. 特発性てんかん(原因不明のてんかん)

MRIや血液検査で明らかな異常が見つからないにもかかわらず、繰り返し発作が起こるタイプです。遺伝的要因が関係していると考えられており、1〜5歳の若い猫で初発することが多いです。

2. 構造的てんかん(症候性てんかん)

脳腫瘍・脳炎・外傷後の瘢痕(はんこん=傷跡)・水頭症など、脳に明確な病変があるために発作が起こるタイプです。中高齢(7歳以上)で初めて発作が出た場合はこのタイプを強く疑います。

3. 反応性発作

てんかんとは異なり、低血糖・肝性脳症・尿毒症・中毒など脳以外の原因で一時的に発作が起こるものです。原因を治療すれば発作も収まります。


発作の種類と見え方

全般発作(大発作)

  • 前兆期(数秒〜数分):落ち着きがなくなる・鳴く・飼い主のそばに来る
  • 発作期(通常30秒〜2分):意識消失+全身の硬直→ガクガクした痙攣(強直間代発作)、よだれ・失禁を伴うことがある
  • 回復期(数分〜数時間):もうろう状態→徐々に正常に戻る。一時的な失明・歩行異常が見られることもある

焦点発作(部分発作)

  • 顔の片側だけがピクピク動く
  • 片方の前足だけがパドリング(漕ぐような動き)する
  • 口をクチャクチャさせる・よだれを垂らす
  • 意識がある場合とない場合がある

猫では焦点発作のほうが多いとされています。飼い主が「変な癖」と見過ごしていることも少なくありません。


今すぐ病院に行くべきサイン

  • 発作が5分以上止まらない(重積発作)
  • 24時間以内に3回以上発作が起きている(群発発作)
  • 発作後1時間たっても意識が戻らない
  • 初めての発作(原因特定のため)
  • 発作の頻度が以前より明らかに増えている
  • 発作中に呼吸が止まる・チアノーゼ(粘膜が紫色)がある

様子見してよい場合

以下をすべて満たす場合は、次の定期受診時に獣医師に報告してください。

  • てんかんと診断済みで抗てんかん薬を服用中
  • 発作は2分以内に自然に収まった
  • 発作後30分以内に普段の様子に回復した
  • 24時間以内の発作は1回のみ
  • 直近の血液検査(薬の血中濃度測定を含む)で異常がなかった

検査と診断

てんかんの確定診断には「他の原因の除外」が必要です。一般的な検査の流れは以下の通りです。

  1. 血液検査・尿検査:代謝性疾患(低血糖・肝不全・腎不全)の除外。費用目安:5,000〜15,000円
  2. 血圧測定:高血圧による脳症の除外
  3. MRI検査:脳腫瘍・脳炎・構造異常の確認。費用目安:50,000〜100,000円(全身麻酔が必要)
  4. 脳脊髄液検査:脳炎・感染症の確認。MRIと同時に実施されることが多い
  5. 抗てんかん薬の血中濃度測定:治療中の投薬量の調整に使用

MRI検査は全身麻酔を必要とするため、猫の年齢や全身状態を考慮して実施を判断します。


治療と管理

抗てんかん薬

猫のてんかん治療で最も一般的に使用される薬は以下の通りです。

  • フェノバルビタール:第一選択薬。1日2回の経口投与。効果が出るまで1〜2週間かかる。副作用として投与初期の鎮静・食欲増進・多飲多尿がある
  • レベチラセタム:副作用が比較的少なく、肝臓への負担が軽い。1日2〜3回の投与が必要。フェノバルビタールとの併用で使われることも多い
  • ジアゼパム:犬では長期使用しないが、猫では経口維持療法に使われることがある。ただし急性肝壊死のリスクがあるため、定期的な肝機能検査が必須

投薬管理のポイント

  • 決まった時間に投薬する:投与間隔のばらつきは±1時間以内が理想
  • 自己判断で減薬・中断しない:急な断薬は重積発作を誘発する危険がある
  • 定期的な血液検査:フェノバルビタール開始後は2週間後・1か月後・その後3〜6か月ごとに血中濃度と肝機能を確認
  • 薬の残量管理:残り1週間分になったら早めに病院へ連絡

治療の目標

てんかんの治療目標は「発作をゼロにすること」ではなく、「発作の頻度と重症度を生活の質(QOL)を損なわないレベルまで減らすこと」です。多くの場合、治療前と比較して発作頻度を50%以上減少させることが現実的な目標とされています。


日常生活での管理

環境の安全対策

  • キャットタワーの最上段を外す、または低いタイプに変更する
  • 浴槽に水を溜めたままにしない
  • ベランダ・窓からの脱走防止ネットを設置する(発作時の落下防止)
  • 家具の角にクッション材を取り付ける

発作の記録

毎回の発作について以下を記録し、受診時に持参してください。

  • 発生日時と発作の持続時間(秒単位)
  • 発作の種類(全身性か部分的か)
  • 発作前後の猫の行動
  • 投薬状況(直前の投薬時間)

ストレス管理

強いストレスや睡眠不足は発作の閾値(いきち=発作が起きるまでの限界値)を下げる可能性があります。引っ越し・来客・多頭飼育のトラブルなどのストレス要因をできるだけ軽減しましょう。


病院に行くときの準備

  1. 発作の動画:発作の種類を判断する最も有力な手がかりになる
  2. 発作記録ノート:日時・長さ・頻度・投薬状況を時系列でまとめる
  3. 服用中の薬:薬の名前・用量・残量を確認。薬の現物を持参すると確実
  4. 前回の血液検査結果:他院で受けた検査があれば持参
  5. 生活環境の変化:フード変更・引っ越し・同居動物の増減などをメモ

この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。

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この記事は一般的な獣医学知識に基づく情報提供を目的としており、獣医師の診察に代わるものではありません。 個々の状態は異なるため、少しでも不安がある場合は動物病院を受診してください。