犬のイボの種類 — 乳頭腫?皮脂腺腫?放置してよい?

犬のイボ(乳頭腫)— 放置OK?取るべき?判断基準と治療法

この記事は獣医師の監修を受けています

愛犬の顔や体にポツッとイボのようなできものを見つけたことはありませんか?犬のイボの多くは「乳頭腫(にゅうとうしゅ)」や「皮脂腺過形成(ひしせんかけいせい)」と呼ばれる良性のできもので、命に関わることはほとんどありません。しかし中には悪性腫瘍がイボに似た見た目をとることもあるため、正しい知識と判断基準を持っておくことが大切です。


犬のイボの種類

1. 乳頭腫(パピローマ)

パピローマウイルスの感染によってできるイボです。表面がカリフラワー状またはギザギザした形状で、白〜ピンク色をしています。

  • 若齢犬(2歳以下)の口腔内乳頭腫:口の中・唇・舌にできる。免疫が未成熟な若い犬に多く、通常1〜5か月で免疫がウイルスを排除して自然退縮する
  • 高齢犬の皮膚乳頭腫:体のさまざまな場所にできる。自然退縮しにくく、徐々に数が増えることがある

パピローマウイルスは犬同士で感染しますが、人間には感染しません。

2. 皮脂腺過形成・皮脂腺腫

皮脂腺(皮膚に油分を供給する腺)が増殖してできるイボ状のできものです。表面がツルッとしているか、わずかにブツブツした質感で、黄白色〜ピンク色をしています。高齢犬に多く、プードル、コッカー・スパニエル、シー・ズーで好発します。良性で転移しません。

3. 皮膚線維腫(ひふせんいしゅ)

硬くて丸い小さなできもので、皮膚と同じ色〜やや暗い色をしています。四肢にできることが多く、良性です。

4. 注意が必要なイボに似たできもの

以下は見た目がイボに似ていますが、性質が異なるため注意が必要です。

  • 肥満細胞腫:虫刺されやイボに似ることがあり、最も見逃されやすい悪性腫瘍の一つ
  • 扁平上皮がん(へんぺいじょうひがん):皮膚表面にカサカサした潰瘍状のできものとして現れることがある
  • 悪性黒色腫(メラノーマ):黒〜暗褐色のできもの。口腔内や爪の付け根にできた場合は悪性度が高い

放置してよい判断基準

以下をすべて満たす場合は、定期的な観察のもと経過を見守ることができます。

  • 直径が5mm以下で、2〜3か月間サイズに変化がない
  • 表面がなめらかで、潰瘍(ただれ)・出血・かさぶたがない
  • 犬が気にしていない(舐めない・引っ掻かない)
  • 日常生活に支障がない(歩行の邪魔にならない・物を食べるのに困らない)
  • 色が均一で、黒色・暗赤色ではない

ただし初めて見つけたイボは、一度動物病院で「良性である」ことを確認してもらうことを推奨します。 細胞診(注射針で細胞を採取する簡単な検査)で概ね判断できます。


取るべき(治療すべき)判断基準

以下のいずれかに当てはまる場合は、切除や治療を検討すべきです。

  • 1か月以内に目に見えて大きくなっている
  • 表面が潰瘍化して出血・浸出液がある
  • 犬が頻繁に舐める・引っ掻く→二次感染のリスク
  • 関節の曲げ伸ばし部分にあり、動くたびに擦れて出血する
  • 口腔内にあり、食事や飲水を妨げている
  • 目の周りにあり、視界を遮っている
  • 散歩中に地面や草に引っかかる位置にある
  • 色が黒い・形が不均一・境界があいまい

今すぐ病院に行くべきサイン

  • イボが急に出血し、止まらない
  • イボの周囲が赤く腫れて膿(うみ)が出ている(感染)
  • 口腔内のイボが急速に大きくなり食事が困難になっている
  • 数週間で複数のイボが同時に出現した
  • イボの色が急に変わった(特に黒色化)

治療法

1. 外科的切除

最も確実な治療法です。全身麻酔または局所麻酔下でイボを切除し、切除した組織を病理検査に出して良性・悪性を確定します。

  • 費用目安:10,000〜50,000円(麻酔の種類・部位・サイズにより異なる)
  • メリット:確実な除去と病理診断が同時に可能
  • デメリット:全身麻酔のリスク(特に高齢犬や持病のある犬)

2. 凍結療法(クライオサージェリー)

液体窒素(マイナス196℃)でイボの組織を凍結壊死させる方法です。

  • 小さなイボ(5mm以下)に適している
  • 麻酔なしまたは局所麻酔で実施可能
  • 治療後にかさぶたができ、1〜3週間で脱落する
  • 費用目安:3,000〜10,000円/1箇所

3. レーザー治療

CO2レーザーでイボを蒸散させる方法です。出血が少なく治癒が早いのが利点ですが、実施できる動物病院は限られます。

4. 経過観察

良性と確認されたイボで、犬の生活に支障がなければ「何もしない」も立派な選択肢です。特に高齢犬で全身麻酔のリスクが高い場合は、積極的な治療より経過観察が選ばれることも多いです。


自宅でのケア

日常のチェック

  • 月1回の全身チェック:ブラッシング時にイボの数・サイズ・外観を確認
  • 変化があれば写真を撮って記録する(スケールとして定規やコインを横に置く)

イボ周辺の清潔管理

  • 汚れたら湿らせたガーゼでやさしく拭く
  • 出血した場合は清潔なガーゼで5分間圧迫止血→止まらなければ受診
  • 犬が舐め続ける場合はエリザベスカラーを装着する

やってはいけないこと

  • 糸で縛って取ろうとする:感染・出血・壊死のリスク
  • 自分でハサミや刃物で切る:出血が止まらない・感染・腫瘍の取り残しの危険
  • 市販の人間用イボ取り薬を塗る:サリチル酸やイミキモドは犬に対する安全性が確立されていない
  • 「イボだから大丈夫」と自己判断で放置し続ける:悪性腫瘍の可能性を否定するには獣医師の判断が必要

病院に行くときの準備

  1. イボの記録:発見日・場所(写真で印をつける)・サイズの経過・外観の変化
  2. 数と分布:体のどこに何個あるかを一覧にする(体の絵にマークするのも有効)
  3. 犬の年齢・犬種:イボの種類を推定する参考になる
  4. 気になる症状:出血・かゆみ・痛みの有無と頻度
  5. 治療歴:過去にイボを切除した経験があれば、その時の病理結果を持参

この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。

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この記事は一般的な獣医学知識に基づく情報提供を目的としており、獣医師の診察に代わるものではありません。 個々の状態は異なるため、少しでも不安がある場合は動物病院を受診してください。