猫が紐・糸を飲み込んだ — 腸閉塞の危険と対処法

猫が糸・紐を飲んだ — 引っ張ってはダメ!正しい対処法

この記事は獣医師の監修を受けています

猫が糸や紐を飲み込む事故は、猫の誤飲トラブルの中でも最も命に関わる緊急事態です。猫の舌は後ろ向きのトゲ(糸状乳頭)で覆われており、口に入った糸を自力で吐き出すことができません。紐状異物は腸閉塞だけでなく、腸の穿孔(穴が開くこと)と腹膜炎を引き起こし、処置が遅れると致死率が急激に上がります。


紐状異物が特別に危険な理由

通常の異物(ボールや小石など)は腸管を「詰まらせる」ことが問題ですが、紐状異物はそれとは異なるメカニズムで腸を傷つけます。

腸が切れるメカニズム

  1. 糸の一端が舌の根元や胃の出口(幽門部)に固定される
  2. もう一端が腸の蠕動運動(ぜんどう:食べ物を先に送る波打つ動き)で腸の奥に送り込まれる
  3. 糸が引っ張られ、腸がアコーディオンのようにたぐり寄せられる(プリカシオン)
  4. 糸が腸壁に食い込み、のこぎりのように腸を切り裂く
  5. 腸に穴が開き、腸内の細菌がお腹の中に漏れ出し、腹膜炎を起こす

この過程は数時間〜1日で進行することがあります。


飲み込みやすい紐状のもの

  • 裁縫糸・ミシン糸(特に針付きは極めて危険)
  • 毛糸・編み物の糸
  • デンタルフロス
  • 釣り糸
  • クリスマスのティンセル・ラメモール
  • ラッピングリボン
  • タコ糸・調理用たこ糸
  • ブラインドの紐
  • 靴紐
  • 猫じゃらしの紐部分

紐を飲んだときの症状

初期(飲み込んでから数時間以内)

  • よだれが増える
  • 口をパクパクする、口を気にする仕草
  • 嘔吐(吐こうとするが出ないことも)
  • 落ち着きがなくなる

腸閉塞が始まった段階(12〜48時間)

  • 嘔吐を頻繁に繰り返す
  • 食事を全く受け付けない
  • お腹を触ると痛がる
  • 背中を丸めてじっとしている
  • 便が出ない、または少量の下痢

腸穿孔・腹膜炎(24〜72時間)

  • 急激にぐったりする
  • 発熱(正常体温38.0〜39.2℃ → 40℃以上)
  • お腹が硬く膨れる
  • ショック状態(歯茎が白い、体温が下がる、反応が鈍い)

今すぐ病院に行くべきサイン

猫が紐状の異物を飲んだことが分かった場合は、症状の有無に関わらず直ちに受診してください。

特に緊急のサイン:

  • 口から糸が出ている、舌の裏に糸が見える
  • 肛門から糸が出ている
  • 嘔吐を繰り返している
  • お腹を触ると痛がる
  • 食欲が完全にない
  • ぐったりしている

様子見してよい場合

紐状異物に「様子見」は基本的にありません。

糸を口に入れたがすぐに取り上げて、口の中に何も残っていないことを確認でき、その後嘔吐もなく元気な場合のみ、飲み込まなかったと判断できます。少しでも飲み込んだ疑いがあれば受診してください。


絶対にやってはいけないこと

1. 口や肛門から出ている糸を引っ張らない

これが最も重要なルールです。糸を引っ張ると、腸壁に食い込んでいる部分がのこぎりのように腸を切り裂きます。口から出ている場合も、肛門から出ている場合も、絶対に引っ張らないでください。

糸が長く垂れ下がって猫が踏んだり引っかけたりする危険がある場合は、口元(または肛門近く)から数cmのところでハサミで切って、それ以上糸が体内に入ったり引っ張られたりするのを防いでください。

2. 自分で吐かせない

猫への催吐は犬以上にリスクが高く、紐が絡まった状態での嘔吐は腸の損傷を加速させます。

3. 食事を与えない

異物を「押し流す」ことを期待して食べ物を与えるのは逆効果です。


自宅でできる応急処置

  1. 口の中を確認する — 舌を持ち上げて裏側を確認。糸が巻き付いていれば触らずにそのまま病院へ。
  2. 垂れ下がった糸が引っかからないよう処置する — 長い糸が垂れている場合、猫が動き回って家具に引っかけるのを防ぐため、口元/肛門近くで切って短くします。
  3. 飲んだ糸の種類と長さを推定する — 糸巻きの残量、猫じゃらしの欠損部分などから推定します。
  4. 食事と水を控える — 手術や麻酔に備えて絶食にします。
  5. すぐに病院に連絡する — 移動中も猫をキャリーに入れて安静に保ちます。

病院に行くときの準備

  • 飲み込んだ糸の同一品 — 素材と太さの確認に重要
  • 推定される長さ
  • 飲み込んだ推定時刻
  • 症状の経過(嘔吐の回数と内容、食欲、排便の有無)
  • 猫の体重

病院ではレントゲンと超音波検査で紐の位置と腸の状態を確認します。糸自体はレントゲンに写りませんが、腸のたぐり寄せ(プリカシオン)のパターンや、腸内のガス・液体の溜まり方から診断できます。多くの場合開腹手術が必要になり、腸の複数箇所を切開して糸を取り出します。腸壊死がある場合は壊死部分の切除も行います。手術が早いほど切除範囲が小さく、回復も早いです。


この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。

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この記事は一般的な獣医学知識に基づく情報提供を目的としており、獣医師の診察に代わるものではありません。 個々の状態は異なるため、少しでも不安がある場合は動物病院を受診してください。