犬のおしっこが多い・頻尿 — 膀胱炎?糖尿病?原因と受診目安
この記事は獣医師の監修を受けています
愛犬が急にトイレの回数が増えた、おしっこの量がいつもより多い——そんな変化に気づいたら、体の中で何かが起きているサインかもしれません。「頻尿(何度もおしっこに行く)」と「多尿(1回の量が多い・1日の総量が多い)」は似ているようで原因が異なります。この記事ではそれぞれの原因・見分け方・受診の判断基準を解説します。
「頻尿」と「多尿」の違い
まず、愛犬の状態がどちらに当てはまるかを確認しましょう。
頻尿(ひんにょう)
- 何度もトイレに行くが、1回の量は少ない
- 排尿のポーズをとるがほとんど出ない、または数滴程度
- 排尿時に痛そうにする・鳴く場合がある
- 主な原因:膀胱炎、尿路結石、前立腺疾患
多尿(たにょう)
- 1回のおしっこの量が多い、または1日の総量が多い
- 通常、多飲(水をたくさん飲む)を伴う
- 犬の正常な1日の飲水量は体重1kgあたり50〜60ml。これを超える場合は多飲
- 犬の正常な1日の尿量は体重1kgあたり20〜45ml。これを超える場合は多尿
- 主な原因:糖尿病、腎臓病、クッシング症候群、子宮蓄膿症
例:体重5kgの犬の場合、1日の飲水量が300ml(体重1kgあたり60ml)を超えたら多飲の可能性
頻尿の原因
1. 膀胱炎・尿路感染症(最多)
細菌感染によって膀胱に炎症が起き、少量の尿しか溜められなくなります。メス犬に多く、頻尿・排尿痛・血尿が典型的な三徴候です。再発しやすい疾患でもあります。
2. 尿路結石
膀胱や尿道にできた結石が膀胱壁を刺激し、頻繁に排尿したくなります。結石が尿道に詰まると排尿困難・排尿不能になり緊急事態です。
3. 前立腺疾患(オス犬)
未去勢のオス犬で前立腺が肥大すると、膀胱や尿道を圧迫して頻尿になります。排尿困難や排便困難を伴うこともあります。
4. 膀胱腫瘍
膀胱にできた腫瘍が膀胱容量を減少させたり、膀胱壁を刺激して頻尿を引き起こします。中〜高齢犬に多く見られます。
5. 行動的な原因
マーキング行動の増加(特に未去勢のオス)、不安・ストレスによる粗相は「病気の頻尿」とは異なりますが、見分けが重要です。
多尿・多飲の原因
1. 糖尿病
血糖値が高くなると、腎臓で糖を再吸収しきれず尿と一緒に排出されます。糖が水分を引き連れて出るため尿量が増え、脱水を補うために水をたくさん飲みます。多飲多尿に加えて、食べているのに体重が減る・毛並みが悪くなるのが特徴です。
2. 慢性腎臓病(CKD)
腎臓の濃縮能力が低下し、薄い尿を大量に作るようになります。初期は多飲多尿のみで他の症状がないため見逃されやすいです。7歳以上の犬では定期的な腎臓の検査が推奨されます。
3. クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)
副腎からコルチゾール(ストレスホルモン)が過剰に分泌される疾患です。多飲多尿・多食・お腹が膨れる・皮膚が薄くなる・脱毛(左右対称)が特徴的な症状です。中〜高齢の小型犬に多く見られます。
4. 子宮蓄膿症(未避妊のメス犬)
子宮に膿がたまる疾患で、多飲多尿が初期症状として現れます。発情後1〜2か月以内に発症しやすく、放置すると敗血症・子宮破裂で命に関わります。未避妊のメス犬で多飲多尿+元気がない場合は緊急性が高い疾患です。
5. 尿崩症
抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌不足または腎臓の反応低下により、大量の薄い尿が出続ける疾患です。1日に体重1kgあたり100ml以上の水を飲むような極端な多飲が特徴です。
今すぐ病院に行くべきサイン
以下が一つでも当てはまる場合はすぐに動物病院へ。
- おしっこがまったく出ない(尿路閉塞の緊急事態)
- 何度もトイレに行くが数滴しか出ず、痛がっている
- 多飲多尿+急にぐったりした(子宮蓄膿症・糖尿病性ケトアシドーシスの可能性)
- 多飲多尿+嘔吐+食欲廃絶
- お腹が急激に膨れてきた
- 尿に血が混じっている
- 未避妊のメス犬で発情後1〜2か月以内に多飲多尿+陰部から膿のような分泌物
様子見してよい場合
以下をすべて満たす場合は、数日以内の受診を前提に自宅で様子を見られます。
- 排尿はスムーズにできている
- 食欲・元気がいつも通り
- 尿の色は正常(透明〜薄い黄色)
- 暑い日や運動後の一時的な飲水量増加
- 排尿時に痛がる様子がない
- 嘔吐・下痢がない
ただし、多飲多尿が3日以上続く場合は必ず受診してください。
自宅でできる対処
飲水量の計測
多飲多尿を疑ったら、まず実際の飲水量を測りましょう。
- 朝に水のボウルに入れた量を計量カップで測定
- 翌朝に残量を測定して、1日の飲水量を算出
- 3日間連続で記録すると正確な傾向がわかる
- 目安:体重1kgあたり60mlを超えると多飲の可能性
排尿の記録
- 1日のトイレの回数(通常は3〜5回程度)
- 1回あたりの量(多い・少ない・数滴)
- 排尿時の様子(スムーズ・力む・鳴く)
- 尿の色(透明・黄色・ピンク・赤)
尿のサンプル採取
受診時に持参できると診断がスムーズです。
- 清潔な容器で排尿時に受け止める
- 冷蔵庫で保管し、4時間以内に持参が理想
- 朝一番の尿が検査に最適
環境面の確認
- 水は常に新鮮なものを自由に飲めるようにしておく(多飲の原因があるのに水を制限すると脱水する)
- トイレシーツを多めに用意して粗相があっても対応できるようにしておく
- 室温管理:暑すぎる環境では飲水量が正常でも増加する
病院に行くときの準備
- 飲水量の記録:3日間の1日あたりの飲水量(体重も合わせて記録)
- 排尿の記録:回数・量・色・排尿時の様子
- 尿のサンプル:可能であれば新鮮な尿を容器に入れて持参
- 食事内容:フードの種類・量・おやつ(塩分の多いおやつは飲水量を増やす)
- 避妊・去勢の有無と時期:子宮蓄膿症や前立腺疾患の鑑別に重要
- 保険証を持参:血液検査・尿検査・超音波検査・ホルモン検査など複数の検査が必要になることが多い
多飲多尿は原因の特定に複数回の検査が必要になることがあります。初回受診で確定診断がつかない場合でも、経過観察と追加検査を行うことで原因にたどり着けることがほとんどです。
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。