犬の膀胱炎 — 繰り返す原因と治療・再発予防
この記事は獣医師の監修を受けています
「おしっこの回数が急に増えた」「トイレで長くいきんでいるのに少ししか出ない」——こうした症状の多くは膀胱炎(ぼうこうえん)が原因です。犬の膀胱炎は動物病院で非常によく見られる病気で、メス犬は尿道が短いためオス犬に比べて約3倍かかりやすいとされています。適切に治療すれば数日〜2週間ほどで改善しますが、中途半端な治療は再発の大きな原因になります。この記事では原因・治療の流れ・再発を防ぐポイントをまとめます。
犬の膀胱炎の主な原因
1. 細菌感染(最多)
犬の膀胱炎の約70〜80%は細菌感染が原因です。大腸菌やブドウ球菌などの細菌が尿道口(おしっこの出口)から侵入し、膀胱内で繁殖して炎症を起こします。メス犬は尿道が太く短いため細菌が侵入しやすく、特にかかりやすい傾向があります。
2. 結石による刺激
膀胱内にできた結石(ストルバイト結石やシュウ酸カルシウム結石)が膀胱の粘膜を傷つけ、炎症を起こしたり、結石の周囲に細菌が付着して感染が繰り返されたりします。
3. 基礎疾患(クッシング症候群・糖尿病)
クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)や糖尿病がある犬は免疫力が低下しやすく、膀胱炎を繰り返す傾向があります。膀胱炎が年3回以上再発する場合は、こうした基礎疾患が隠れている可能性を調べる必要があります。
4. 膀胱腫瘍
高齢犬で血尿や頻尿が改善しない場合、膀胱の移行上皮癌(いこうじょうひがん)が原因のことがあります。抗生剤治療で改善しない場合は超音波検査やカテーテル生検を検討します。
今すぐ病院に行くべきサイン
以下が一つでも当てはまる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
- 真っ赤な血尿が出ている(ティッシュに鮮血がつく)
- 排尿ポーズをとるがまったく尿が出ない
- ぐったりして食欲がない
- 発熱がある(耳や足先が異常に熱い)
- 嘔吐や下痢を伴っている
- おしっこが強い悪臭を放つ、または濁りがひどい
- 既に抗生剤を飲み切ったのに症状が再発した
排尿がまったくできない場合は尿道閉塞の可能性があり、緊急対応が必要です。
様子見してよい場合
以下のすべてに当てはまる場合は、1〜2日は自宅で経過観察が可能です。
- おしっこの回数がやや増えた程度(1日の排尿回数が普段の1.5倍以内)
- 尿の色はやや濃い〜薄いピンク程度で、鮮血ではない
- 食欲・元気ともに普段通り
- 排尿時に強い痛がりや鳴き声がない
- 水をしっかり飲めている
ただし、2日経っても改善しない場合は受診してください。膀胱炎は自然治癒することもありますが、原因によっては悪化する場合があります。
自宅でできるケアと再発予防
水分摂取量を増やす
水をたくさん飲ませて尿量を増やすことが、細菌を洗い流す最も効果的な方法です。
- ドライフードにぬるま湯をかける:フード重量と同量〜1.5倍の水を加える
- ウェットフードを併用する:水分含有量が約75%あり、自然と水分摂取が増える
- 水飲み場を増やす:家の中に2〜3か所、新鮮な水を常に用意する
トイレ環境を整える
- こまめにトイレに出す:1日3〜4回以上の排尿機会を確保する
- トイレを清潔に保つ:ペットシーツはこまめに交換し、屋外排泄の犬も陰部を清潔に
- 長時間の我慢をさせない:留守番中にトイレを我慢させる環境は膀胱炎の温床
抗生剤は最後まで飲み切る
膀胱炎の治療では通常7〜14日間の抗生剤が処方されます。症状が改善しても、処方された日数分は必ず飲み切ってください。 途中でやめると耐性菌(たいせいきん=抗生剤が効かなくなった細菌)が発生しやすくなり、再発と難治化の原因になります。
処方食の検討
結石が関与する膀胱炎の場合、獣医師から処方食(尿のpHをコントロールするフード)を勧められることがあります。自己判断でサプリメントやクランベリー製品を使うのではなく、まずは獣医師に相談しましょう。
病院に行くときの準備
- 尿を採取して持参:朝一番の尿をスポイトや紙コップで採取し、清潔な容器に入れて持参(採取から2時間以内が理想)
- 排尿の様子を動画で記録:頻尿やいきみの様子を動画で撮ると獣医師に伝わりやすい
- 排尿回数と色の記録:いつから・1日何回・尿の色の変化をメモしておく
- フードの種類を確認:食事内容は結石の種類を推測する手がかりになります
- 過去の膀胱炎の治療歴:以前かかったことがある場合、使った抗生剤の種類や期間が参考になります
病院では尿検査(試験紙・顕微鏡・培養)が基本で、必要に応じてエコー検査やレントゲンで結石・腫瘍の有無を調べます。費用は初診で5,000〜15,000円程度が目安です。
この記事の情報は一般的な参考情報です。個別の症状については必ず獣医師にご相談ください。